そもそもレーザー育毛って何?
低出力レーザー療法(Low Level Laser Therapy)は、FDA(まあ、アメリカの厚労省ですね)で認可された女性、男性の薄毛治療法です。
この「FDAで認可された」ってところが世間の注目を集めて日本でも話題になりました。
FDAで認可されたのなら、そりゃあ効果があるんだろう。フィナステリドやミノキシジルで良好な効果を得られなかった薄毛の人たちの福音になるかも!
と注目された結果、AGA病院で採用されたり、医療機関でなくとも扱えるので発毛サロンの施術プランの一つになってたり、専用のブラシやヘルメットのような形状の商品も発売されてますね。
こうしたアメリカでの動きを受けて、2017年版の日本皮膚科学会の"男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン"では、低出力レーザー照射は、推奨度が上から2番目のBとされました。
今回はまず、この新しい治療法がどのようなもので、どれくらい効果がありそうなのか、アメリカ国立衛生研究所(アメリカ最古の医学研究の拠点機関)の資料に書いてることをまとめてみました。
レーザー治療のきっかけ
1960年代後半に、ハンガリーの医師が実験用マウスにレーザーを照射し発がん性を調べようとしたところ発がん性はなかったそうですが、毛が生えてきたことから、「レーザー療法」と発毛の関係が取りざたされました。
実際、美容外科でレーザー脱毛をすると、レーザーを照射した個所の毛の密度が増えたり、髪が黒々としてきたりすることがあるそうです。
発毛のメカニズム
まだメカニズムは解明されていないようですが、いくつかの仮説が立てられています。有力な説は次のようなものです。
- 休止期の毛包を成長期に誘導する
- 成長期の毛包が休止期に移行してしまうのを抑える
- 成長期を延長する
- 成長期の毛包における毛母細胞の増殖率を高める
あと色々書いてましたけど、それ全部じゃん!って感じだったので割愛します。
どれくらい効果があるのか?
いくつかの臨床試験があるのですが、いわゆる二重盲検試験の結果をご紹介します。
とその前に「二重盲検試験」を解説しておきます。
二重盲検試験とは?
試験に参加する患者を、本物のレーザー照射機器で治療するグループと、それに見た目はそっくりだけど中は空っぽの機器(ガラクタですな)で治療?するグループに分けて、どの患者に本物の(偽物の)機器を使っているのか、患者にも、医師にも知らせずに治療をし、それぞれ結果がどう変わるかを見る試験のやり方です。
なんでこんな七面倒くさいことをするのかというと、"信じる者は救われる!"じゃないですけど、毛を生やしてくれる!と信じると、たとえそれがガラクタでも毛が生えてくるためです。
そのため、"医療機器"というからにはガラクタの効果に勝たなければいけない!ということで比較試験を行うわけです。
その際、あらかじめ患者や医師が「それ、ガラクタだし・・」と分かっていると"信じる力"が失われてガラクタの効果が低くなってしまう=医療機器が勝ちやすくなってしまうので、患者にはもちろん、使わせる医師にも知らせない、つまりダブルで"目隠し"をします。
これが二重盲検比較試験(ダブル・ブラインド・テストとも)と言います。
と前置きが長くなりました。
試験結果1
110人の男性AGA患者を無作為に本物のレーザー機器(HairMax LaserComb® | ヘアマックス レイザーコーム)のグループとニセのガラクタ機器グループに分け、それぞれ26週間にわたって、週に3回、1回15分間レーザー機器(or ガラクタ機器)を使わせました。
その結果、ニセ機器を使った患者と比べ、ホンモノのレーザー機器を使った患者の方が、毛の密度が増加しました。
さらに、患者評価において、発毛効果、脱毛スピード、毛の太さ、頭皮の状態、毛の輝きが改善されてます(数字として発毛効果がどれくらいだったのかが分かりません)。
試験結果2
40人の男性と女性のAGA患者を無作為に本物とガラクタで治療するグループに分けます。
こちらで使う機械はヘルメットタイプでした。
24週間、1日18分、両方のグループに使ってもらったところ、専門家(医師かどうかは分かりません)の判断では髪の密度や髪の太さという点で、ガラクタよりも本物のレーザー照射ヘルメットの方が高い改善効果がありました。
しかし、患者の評価では差がありませんでした。
副作用
両方の試験では取り立てて指摘すべき深刻な副作用は観察されませんでした。
そもそも50年以上にわたって様々な医療現場でレーザーは使われてきたそうですが、副作用はほとんど起こってないそうです。
この資料の結論
男性と女性の両方で育毛のための低出力レーザー療法(以下LLLT)は安全で効果的であるようです。しかし、LLLTの長期間での有効性、安全性を見るには、もっと多くの研究が必要です。
毛の成長に対するLLLTの影響を調べたほとんどの研究では、635〜650nmの範囲の波長が使用されていましたが、さらに高い皮膚透過能力を持つ810nmなどの近赤外波長と赤色光とを比較した研究がありません。
また、連続照射した方が良いのか?または点滅させて照射した方が良いのか?、さらに、レーザーとLEDとではどちらが効果的か?といった検証もこれからです。
といった内容でした。
効果はあると思うよ。でも、もっと効果も安全性も高められる方法があるかもしれないから、研究頑張ってね!
って感じでしょうか。
医療機器のFDA認可はゆるい?
で、ここで、アメリカでも議論にになっているポイントについて最後に触れておきます。それは、
"FDAの承認"とはどういう意味なのか?
ってことです。
僕もそう思ってたんですが・・・。
医薬品と医療機器とでは認可の厳しさが全然違う!
FDAで低レベルレーザー治療機器が認可されたのは事実のようです。
実際、HairmaxLasercomb®(ヘアマックスですな)という低レベルレーザーを照射する「くし」状の医療機器が、米国食品医薬品局(FDA)の認可を受け、2007年に男性AGA、2011年に女性AGA(FAGA)の治療のための安全な治療法として510 Kクリアランスを受けました。
で、この510Kクリアランスというのが曲者(くせもの)です。
メーカーは、フィナステリド、ミノキシジル、自毛植毛、と並んで(FDAはこの3つしか薄毛治療に認めてない)薄毛治療で認可された画期的な治療法であるかのように宣伝していますが、実は医薬品と医療機器とでは認可されるために必要な基準の厳しさが全然違うようなんです。
医薬品の場合は、少なくとも2つ以上の、無作為で選んだ患者に対する二重盲検比較試験(さっきのやつです)で、実際の患者を対象とした臨床上の有効性を証明する必要がありますが、医療機器はそこまで求められません。
なんと!医療機器では、実際に宣伝している効果(「フィナステリド、ミノキシジルと並ぶ有効性があります!」)を証明する必要はないんです!
1976年以前に作られた類似機器と「同等」の機能を有していて、安全であることを示せばいいだけだそうです。
しかも機能の「同等性」は厳密な試験で証明する必要はなく「コンポーネント(仕組み?と訳す?)」が同じであるとFDAの担当者が主観的に判断すればいいだけだそうです。
(資料:"Laser Hair Therapy – is it really FDA Approved?")
これが、「アンチLLLT」を生んでいる理由だそうです。
ちょっと水を差すようなことを言いましたが、昔から発毛効果があることは経験的に医療の世界では認められていたことですし、先ほど言ったように、最新の日本皮膚科学会のガイドラインでも高く推奨されている治療ですので、効果は間違いないと思います。
毛髪再生医療の世界的権威、アメリカのコロンビア大学教授のバーンスタイン先生は、その効果を、
と言ってます。
レーザー育毛はどうやって受けるか?
病院に行く
私が知ってる限りでは、レーザーをやってるAGAクリニックはありませんでしたが、レーザー治療と同様に効果があると言われている(上の資料にも出てきてた)LEDライト治療はありました。
AGAスキンクリニックでは赤色LEDライトを照射するヘルメット型の機器を医師の診察後、販売してくれます。25万円です。
育毛サロンに行く
アデランスがレーザー治療のような施術を育毛プログラムに組み入れてます。HP上では赤色LEDと書いてますが、私が説明を受けた時はレーザーと言ってました。
これは大阪大学の医師と共同で開発して臨床試験もしている治療法だそうです。
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なお、日本皮膚科学会のガイドラインではLEDの照射も低出力レーザーと同様に効果があるとされています。
市販の機器を買って家でやる
上の試験の所にも出てきてたヘアマックスっていうのが有名ですね。3万円~10万円と3種類あります。
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ちなみに、もし病院に行く踏ん切りが中々つかないなら
こういう人は多いと思います(僕がそうでした)が、そういう人にはAGAクリニック治療補償のついた育毛剤もアリかもしれません。
4か月で4本使って満足できないなら、病院の治療費を出してくれるそうです(ホントかよ?)。
病院に行く前に、育毛剤に最後の望みをかけたい人にはいいかもしれませんね。
なお、定価は高いですが、アマゾンなら時々半額(僕が見た時は5,980円)になっているので、そういう時が狙い目です。