昨今は自毛植毛は"メガセッション"ばやりだそうです。メガセッションというのは一度の手術で大量の移植株を植毛すること。自毛植毛は満足できるボリュームを出すために複数回の手術をすることがあるそうなので、一度で済むなら、こんな理想的なことはありません。しかし、実際はいろいろ問題もあるようで。
FUTを考案し、FUEを世界に広めたアメリカ、コロンビア大学医学部教授のバーンスタイン氏が説明してくれています。
Do You Use Megasessions or Very Large Graft Sessions In Your Hair Transplant Procedures?
先生はメガセッションをしますか?
2007年3月16日
質問
植毛医の中には、一度の手術で5,000~6,000の株を移植する人がいます。先生は、このような大量の株を植え付ける自毛植毛手術はやりますか?
回答
自毛植毛手術の目標は患者の”抜けない毛”を使って最小の株数で最大の満足を引き出すことにあります。決して一度にたくさんの株を植えることにある訳ではありません。あくまで結果に主眼を置くべきです。
例えば、「正確に植毛された2,500~3,000株が目一杯生える」方が、「5,000株を植えても一部しか生えない」場合より望ましいと思っています。
もちろん、5,000株の植毛の方が2,500株の植毛よりもフサフサに見えますが、私の経験では、決して2,500株の2倍フサフサにはなりませんし、2,500株の手術を2回やった場合ほどフサフサにもなりません。
大量移植を可能にするには、FUT法を使って非常に細かく植える必要があります。これは元々私が1995年にこの手技を開発した理由です。
しかし、極端に走ると、その利点が損なわれてしまいます。
非常に大量の移植では、手術時間が長く、それだけ採取した株が長い間体外に置かれることになり、それだけ株にダメージが加わり、その結果、株の生着率が下がり、植えた箇所に目立つ傷が残ったり、必要のない所に植毛されたり、といったことが起こりえます。
また、将来のAGAの進行を的確に予測しないと、最適な結果を実現できません。こうした問題は常に起こるわけではありませんが、移植株数が増えれば増えるほどそれだけ、リスクが大きくなります。
なので、一度に最大量の株を植え付けることが目標なのか、それとも、長期的にみて最高の結果を得ることが目標なのか、きっちり決めておくことが重要です。
FUの保存
最も根本的な問題の一つは、非常に多数の植毛をする医師は必ずしもFUT法での手術を選びませんので、患者は最良の結果をもたらされていません。
医師が自分の手技をFUTだ!と呼ぶのは自由ですが、実際は違います。FU株が元々あった姿を保てていない事があるからです。
FUTの手技の定義とは、毛髪が、元々生えていた姿のままで、植えられる手術法の事です。
FU(あるがままの姿の毛髪組織)を保ったまま移植する、つまり、元々1本から4本の毛髪から構成されているFUを使うことにより最大限のフサフサ効果を引き出すことが出来るのです。
フルスペックのFUは、一部切り取られたFUよりも多くの毛髪を持っているので、それを植えることでフサフサになるのです。
それに毛髪が元々生えていた姿のまま植えることで、ダメージを受けることなく高い生着率が実現できるのでまたフサフサに貢献します。
大規模なメガセッションと聞くと何か良さげですが、実際は一つのFUを分割して数を増やしているにすぎません(なぜ断言できるかはこの後で説明します)。
ごまかされてるんです。
なぜなら、一見、移植株数は増えても、植える髪の数は変わっていませんので(確認してみてください)。実際は、株の切断が増えたり、株が傷ついたり、大量植毛に関連するすべての問題のため、実際に成長する株の数はずっと少なくなる可能性があります。
ドナー箇所(移植毛を採取する後頭部の場所)の傷
1平方センチメートル当たり90のFUがあるので、2,500株採るとしたら、1cm幅x28cmの長さの頭皮を後頭部から切り取らなければなりません。5,000株の植毛なら、幅がこのままなら56cm必要になりますが、人の頭皮から取れるドナー箇所の最大の長さは、33cmです(こめかみから反対のこめかみのあたりまでの長さ)。
5,000株を採取しようとすると、5,000/90FUcm2=55.6cm2のドナー箇所の頭皮が必要になります。もし長さを33cmとするなら幅が1.85cmなければいけません。しかし、切り取った頭皮の両端に向かって細く切り取らねばなりませんし(長方形の傷痕では縫合できません)、耳のあたりになるとこんなに幅広に切れません。というようにちょっと簡単な算数をしただけで、幅が2.5cmに上るような、非常に大きな頭皮が切り取られることになることがお分かりかと思います。
これだけ大きな切開をすると、あと後、手術痕が広がってしまうリスクが増えます。という事で、非常に多くの数の株を採取するためには、このように大きく頭皮を切開するのではなく、実は、採取した株を再度分割することによってはじめて実現できるという事がお分かり頂けたと思います。
*なお日本人の髪の密度は白人の7割程度と言われているそうですので、実際は上の計算よりもっと大きな頭皮が必要になります。
ポッピング
他にも問題があります。大量植毛を行うと、高密度で植える必要があります。しかし、株同士の距離か近づけば近づくほど、ポッピングのリスクが高まります。ポッピングは株同士がお互いを持ち上げてしまうと起こります。移植株が飛び出ると(皮膚の表面から持ち上がる)、移植株は乾燥して死んでしまいます。ある程度のポッピングは許容範囲ですし、うまくやれば簡単に防げるものですが、極端に株同士を近接させると、株の生着率を下げるリスクが高まってしまいます。
このポッピングのリスクを下げるのにベストな方法は、大規模植毛、それに関連する高密度植毛を極限まで推し進めないことです。特に初めて植毛手術を受ける場合にはポッピングのリスクが予見できません。大きく頭皮を切り取り、前頭部に移植する穴を大量に開けてからでは遅いのです。もちろん、2回目だからと言って安心はできませんし、植える場所によってもリスクが変わるので、予想を超えたポッピングが起こるかもしれないのです。
血液の循環
長期にわたり毛がなかったところは、頭皮の血行が悪くなっているので多くの移植株に十分な栄養を届けられません。また、長い間禿げていた人の頭皮は太陽光によるダメージにより、さらに血流が悪くなっています。そのため、大量の株が一度に植えられてしまうと、移植株の生着率を下がってしまうのです。
なお、最初の植毛手術後の治癒期間で、元々あった血流が回復し、新たな株を養うに十分な栄養分が補給されます。
移植株の数の限界
もう一つ、大規模植毛をやる時に見逃されがちな問題があります。それは、普通、ドナー箇所となる後頭部、側頭部から採取できる株数はおよそ、6,000株しかないという事です。最初に5,000株使ってしまうと、残りは1,000しか残ってません。そのため、将来、前頭部や新たに薄くなった箇所に植毛しようと思っても対処できない恐れがあります。
結論
大規模な植毛にはたくさんのメリットがあります。一度で自然な仕上がりを実現できるし、何度も頭皮を切り取らなくても良いし、求めた仕上がりに早くたどり着けます。
だからと言って、頭皮に大きな傷をつけたり、移植毛の生着率を下げたりしていい訳はありませんし、将来の不測の事態に対応できなくても構わない訳でもありません。
4,000,5,000株といった非常の多くの移植を実現するには、理想的な移植株であるFU株を分割する必要があるため、株を傷つけるだけでなく、手術時間が伸びたり、手術費が高額になったり(1株いくらで課金される事が多い)して、結果的に期待ほどにはフサフサの仕上がりにならない恐れがあります。
という事でメガセッションには反対されているようです。
とヨコ美クリニックの今川先生も仰っています。
なので、
とか言ってるのはインチキだってことらしいです。気になるなら先生に聞いてみましょう。
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